今回からは「魅力あふれるお店創りの設計段階」に入っていこうと思います。
お店創りの実務として最初に取り掛かるのが「基本計画」「基本設計」になります。
これは建築やインテリアデザインのプロジェクトに共通する最初であり最重要なステップです。なぜなら、この段階でしっかりしたコンセプトと方向性、それを支えるベースを創る事が、計画全体の良し悪しを左右し、多くのお客さんに支持され繁盛するお店になるかがほぼ決まるからです。
以下に魅力あふれるお店創りの基本計画と基本設計の概要を説明します。
■基本計画(Conceptual Planning)
基本計画は、プロジェクトの初期段階で行われる最重要なプロセスです。ここでは、店舗のコンセプトや方向性を確定させるための検討が行われます。主な要素は以下の通りです。
□コンセプトの策定
「店舗内装の実務1・・・コンセプト創りが繁盛店創りのキーポイントに」でも解説したとおり
プロセス1:目的と目標の設定
プロセス2:ターゲット顧客層の確定
プロセス3:市場調査
プロセス4:ブランディング
を基に、店舗のデザインにおける基本的なアイデアやコンセプトを決定します。
□出店エリアの選定
コンセプトにマッチした地域を選定します。
ここを間違えると、どれほど素晴らしいお店をつくっても、お客さんは来ませんので、ターゲット顧客層を外さない地域選定をしましょう。
□空間要件の決定と出店場所の決定
・空間要件の決定
お店に必要な要素を洗い出し条件を満たす広さを算出しましょう。必要なスペース、什器、設備などの要件を満たし、店舗内の機能や活動に合った面積を確保しましょう。
・出店場所の決定
店舗の出店は「既存建屋にテナントとして入る」「新築建物にテナントとして入る」「所有する建物の一部を店舗にする」等様々な方法がありますが、基本は皆同じです。
出店エリアと空間要件に見合った場所を選定します。
また、「路面店」「2階以上の低層階」「ショッピングモール」「商店街」「住宅街」等々も集客に大きく影響しますので、お店にマッチした場所を選定しましょう。
中には飲食店不可という条件もあるため、注意しましょう。
□レイアウトの検討
出店場所が決まったらいよいよ基本計画の山場に入ります。
店舗内の動線を検討し、スペース配置や繋がりと配置、機能性、アピールポイント、お客様の目線、作業スペースその他を考慮し、空間を割り振っていきます。
この時点で大まかなレイアウトの基本が決まります。
□予算の設定
プロジェクトの予算枠はある程度決めていると思いますが、色々考えながら夢と希望を盛り込んでいくと予算はオーバー気味になるのが一般的です。
コンセプトと予算が一致するように調整していきましょう。
基本計画により、店舗の大まかなデザインやコンセプトが明確化され、各設計段階(基本設計・実施設計・詳細設計)の基盤となります。
このプロセスを経て、いよいよ設計段階に入ります。
■基本設計(Preliminary Design)
基本設計は、基本計画の結果を踏まえてザインとプランニングを進める段階で、設計や仕様のベースが決定されます。
設計事務所が決まっている場合と、設計事務所の選定から始める場合とがありますので、それぞれのプロセスを順を追って解説します。
□設計事務所が決まっている場合:設計事務所に基本設計を依頼
〇基本計画に基づき、設計事務所において設計業務
・平面・立面・断面設計
・使用材料と什器の選定
・電気設備設計(配置や種類、機種の選定)
・給排水設備及び空調換気設備の設計(配置や種類、機種の選定)
・報歳計画・避難計画(消防に要確認のケースあり)
・カラースキーム(色彩計画)
・パースやイメージスケッチなどによる空間表現
・概算見積
・施主へのプレゼンテーション
〇設計事務所からのプレゼンテーションを受け、設計意図やデザインの意図と優位性、機能性その他重要項目を正確に把握し、基本計画にマッチしているかを検討。
この段階での意思疎通と意見交換がその後の設計に大きく影響します
要望とのマッチングや提案内容の充実度などを確認し、修正要望などがあれば基本設計の修正を要求する。
〇上記2項目のプロセスを繰り返し、基本設計を仕上げてきま、
〇最終的に相互の意思疎通ができ、基本設計が定まったら設計契約締結をします
□設計事務所が決まっていない場合:設計事務所数社に入札参加を依頼
〇設計事務所3社程度に見積参加依頼。
入札業者を増やすと内容精査に時間と手間が必要以上にかかるため、3社程度が無難。
〇基本計画に基づき、設計事務所において設計業務及び入札資料作成
・平面・立面・断面設計
・使用材料と什器の選定
・電気設備設計(配置や種類、機種の選定)
・給排水設備及び空調換気設備の設計(配置や種類、機種の選定)
・報歳計画・避難計画(消防に要確認のケースあり)
・カラースキーム(色彩計画)
・パースやイメージスケッチなどによる空間表現
・概算見積
〇依頼した各社からのプレゼンテーションを受け、各社との質疑応答などによる修正があれば修正依頼をする
〇最終提出資料により、設計事務所を決定し、設計契約を締結する。
入札資料は返却しない旨を依頼時に通知しておく必要があり、入札終了後は速やかに契約者以外の資料は処分するようにしましょう
基本設計の結果として、デザインや仕様のベースが確定し、契約した設計事務所と今後は具体的な実施設計に入ります。ここからが本格的な設計になります。
実施設計については、次回の「魅力あふれるお店の実施設計」で解説します。