このシリーズも回を重ねる毎に内容が具体化していますが、今回は工事に直結する設計業務である「実施設計」について解説していきます。
実施設計は、プロジェクトの具体的な詳細を計画し、設計図や仕様書を作成する重要な段階で、見積・施工の根拠となるだけではなく、施工品質や空間のグレードにも影響する事になります。
以下に、実施設計の際に考慮すべきポイントを挙げてみましょう。
■実施設計のスタート
実施設計は、基本設計に基づき、入札もしくは見積合せにより決定した施工会社と、竣工を見据えて詳細設計を進める事になります。
※入札と見積合せの違い(前回の記事では“入札“とだけ書きましたが。。。)
入札は主に公共工事などで採用されており、不特定多数の施工会社が参加し、落札した会社が受注します。
見積合せは民間プロジェクトで多く採用されており、見積参加を数社指定し、指定された会社が見積他提案資料を提出し、それに基づき施工会社を決定する方法です。
■法規制と規格の確認
地域の建築法規や条例、安全規格を最終確認し、詳細設計を行います。
法的に問題なくても、地域条例に反していればプロジェクトは頓挫しますので、注意しましょう。
ネットなどで情報を得る事は出来ますが、地域に足を運び、役所や地域と確認調整を行いながらコミュニケーションをとる事も、スムーズに進めるためには重要になります。
■デザイン決定と詳細設計
基本設計に基づき、各種材料やおさまりを詳細に検討し、施工中や引き渡し後に問題が発生しないよう考慮した詳細設計をします。
建物の外観や内装、素材の選定などデザイン要素も考慮し、美しさや一体感を持つデザインを追求します。
この段階で施主の要望、お店のお客様のニーズをはじめ、街並み、アクセシビリティ、バリアフリー、バックヤード、働き易さ、環境負荷の低減やエネルギー効率など環境への配慮、様々な要素をクリアしたデザインにしなければなりません。
また、これらの事はコストに直結しますので、コストパフォーマンスも考慮し、バランスの取れた設計が求められます。
■設備と技術
電気、配管、空調などの設備や技術要件を設計に組み込みます。節水節電は勿論のこと、熱効率や環境負荷軽減を考慮した設備設計や技術導入が求められます。
また、設備更新やメンテナンスを考慮した柔軟な対応が可能な設計も重要です。
■協力関係構築
設計者・施工会社・施主とのコミュニケーションを密にし、着工に向けて協力体制を作り、関係者や専門家の意見や知識を取り入れて取りまとめていくのも、実施設計段階での設計者の重要な役割になります。
実施設計がお店創りを大きく左右するため、この段階でのポイントを押さえ、先々を見据えた設計をしましょう。それが、より良いプロジェクトの実現に繋がります。
いよいよ次回から「施工」について解説します。